RCO Study Night 「D-Waveが切り開く、量子コンピュータを活用する未来」レポート
はじめに
先日、5/12 (水)、グラントウキョウ サウスタワーでリクルートコミュニケーションズ様主催の量子コンピュータについての勉強会が開かれました!
世界初の量子コンピュータを開発したD-Wave Systems Incの方々を招き、現在動いているデバイスの仕組みや応用例を中心に紹介をいただきました。
本記事はそのレポートになります。
挨拶
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田中宗 助教(早稲田大学高等研究所)
- Dwave: 量子アニーリングマシンを世界初で開発
- 組合せ最適化問題を解くために量子コンピュータを用いる
-
1998年、門脇西森論文から2011年のDwaveのコンピュータ開発までを今日はご紹介します。
D-Wave Systems Incの方々による講演
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Mr.Robert H. (Bo) Ewald – President, D-Wave
はじめに
- 50年前の雑誌に載せられた論文→ムーアの法則
- ムーアの法則が終焉するかもしれない
- エコノミスト誌でもムーアの法則後が語られている
- マイクロソフト研ではムーアの法則の法則(ムーアの法則の終焉を予測する人の数を予測する)が発表された
量子コンピュータとは
- 微視的な量子法則に抗うのではなく、それに従うコンピュータを創りだそうとするもの
- 状態の重ねあわせ
- エンタングルメント
- トンネル効果
- Feynmanから始まり、Deutsch、Shor等によって理論的研究が進められた
量子情報科学まわり
- アニーリング(焼きなまし)は1953年のMetropolis論文に遡る
- 門脇西森論文(1998) がベースになっている
- その二年後にMITを中心に研究が進められ、学生ベンチャーとしてD-Waveが立ち上がった
量子コンピュータの目的
- エネルギー関数を決定し、その中で一番準位の低い場所を探す
- 要は最適化問題
- GoogleはDeepLearningに使えると考えている
- モンテカルロ法にもつかえるのではとロスアラモス研究所では踏んでいる
- 1950年代のコンピュータ黎明期と似たような状況
Mr.Murray Thom – Director, Professional Services
ハードウェアの中身
- 消費電力25kwはコンピュータそのものの消費電力
- 量子コンピュータを支える温度管理(0Kに近い冷蔵システム)には多くの電力が必要
- 量子チップについて、古典のコンピュータチップと姿は変わらない
- ループ状の電流の流れ方で状態を表現する
- その電流は上向き、下向きの磁場を生む
- 二次元イジング模型ライクなモデルをキュービットで再現
- 最適解はイジング模型ライクなモデルのエネルギー停留点を求める問題に帰着する
プログラミングの例
- qbit: 量子ビット
- coupler: 量子ビットのカップル
- weight: 単一量子ビットへの重み付け(実数)
- strength: カップルへの重み付け(実数)
- objective: 実関数の目的関数
これらを用いてパラメータを調整する形でプログラミングしていく
アプリケーションの例
四色問題
- 色をカップリングで表す
- Cの600行にわたるプログラムをキュービットを使ったプログラミング言語(ToQ)で60行に削減することができた
巡回セールスマン問題
性能テストの結果
- 離散組み合わせ最適化問題
- 従来と比較して11000倍
- シミュレーテッド量子アニーリングとの比較
- 従来と比較して1億倍
質疑応答
- 生物系への応用は考えられるか
→ はい、遺伝子分析、早期がん発見等の応用を研究しています。
-
商用を想定しているが、いくら取るんでしょう
→ マシンコストは1500万ドルです
→ リースもあります(笑)
-
金融機関への需要は
→ GSに出資頂いています。リスク予測の関係で
→ デリバティブに関する会議にも参加しています
-
門脇です。物理系からは量子コンピュータの開発にどういった形で貢献できるでしょうか?
→ 理論的にスケールアップした時にこういったシステムが動くかわからないから、そういった方面の研究を期待しています。
-
いつ頃に一般庶民の手に届くようになるか
→ スマホみたいなのは厳しい(低温にする必要があることから)
→ クラウド上のインフラとして使えるようになるのは現実的なのでは
-
ショアのアルゴリズムは解けるか
→ 32000まではいけます(素因数分解のプロにとっては鼻で笑う数字ですが)
-
量子力学の事がわからなくても使えるようになりますか?
→ はい。ToQを使って物理の専門家でなくても目的関数を構築できます。
リクルートにおける取り組み
資料非公開
棚橋耕太郎氏 – リクルートコミュニケーションズ
特徴量抽出
- 特徴量をまとめた行列を如何に疎行列にするか
- L1ノルムでは線形な問題しか扱えないためL0ノルムを用いるようにした
- QAFS(Quantum Annealing Feature Selection)
-
CVR(購入率)を特徴量を使って予測したい
- そのためにQAFSは限られた特徴量を抽出する用途に用いれる
- ランダムフォレストなどに比べて凝集した特徴量数で高い精度をしめした
終わりに
現在実証を繰り返している量子コンピュータの内部の仕組みや応用的な側面を知れる貴重な機会となりました。
アニーリングの論文の著者である門脇氏と世界初の量子コンピュータを開発したD-waveの方々がやり取りする場面があり、歴史的な一ページに立ち会っている感覚を覚えました。
量子情報の理論的な面でも量子コンピュータの実用が進んだ時にどうなるかわからない事が多いというのも個人的にはロマンを感じました。